赤信号を見たら止まる。黄色を見たら少し注意する。緑を見ると、進んでいいと感じる。

私たちは毎日、こうやって色を見て過ごしています。ただそのたびに「これは赤だから止まらなければ」と考えているわけではなくて、色を見た瞬間に注意が向いて、意味を読み取って、行動が変わっている。よく考えるとちょっと不思議なことです。
色は危険を知らせたり、注意を促したり、空間の印象をつくったり、商品を選びやすくしたりと、いろんな場面で使われています。人がどんな人なのかを読むためだけのものじゃなくて、人と環境のあいだでも色はいろんな働きをしているんですよね。今日はこの「環境の中で色がどう働くのか」という話を書いてみたいと思います。
工場では、色が「注意」を伝えている
色が人の行動に関わっているのがわかりやすいのが、工場のような作業環境です。危険な場所や注意が必要な場所、安全な場所を、色で視覚的に区別しておくことがあります。
「ここは危険です」と文字で書いてあると、読んで理解する手間がかかりますが、決められた色で示しておけば、パッと見て情報が伝わります。これは「赤い人は危険」という話ではなくて、「赤という色を、危険や停止の情報を伝えるために環境側に配置している」という使い方です。
色そのものが人の性格を決めているわけじゃなくて、色と人との関係の中で認知や行動が生まれている。工場の色使いは、そのことをわかりやすく教えてくれます。
街の中でも、色は環境をつくっている
街の照明にも色は使われています。代表的なのが青色の防犯灯で、海外でも日本でも防犯対策として使われてきました。青色照明を導入した地域で犯罪件数が変化したことから「青には犯罪を抑える効果がある」という話が広まったこともあります。
ただ、ここは少し慎重に見た方がよさそうです。犯罪件数の変化には、照明の色だけじゃなく明るさや設置場所、地域の環境、人の目が増えることによる抑止効果など、いろんな要因が関わってくるからです。「青だから犯罪が減る」と単純には言えません。
それでも、照明の色を変えることで、人がその場所をどう感じて、どこに注意を向けて、どう行動するかが変わる可能性はある。色は環境をつくる要素として、確かに使われています。
色によって、時間の感じ方まで変わる?
もうひとつ面白いのが、色と時間の感じ方の関係です。時計を見ていなくても「まだ10分しか経ってないの?」と感じることもあれば「もう1時間経ったの?」と感じることもありますよね。時間の感じ方には心理状態や周囲の環境などいろんな要素が関わっていて、暖色・寒色と時間知覚の関係を調べた研究もあります。
ただこれも「赤なら時間を長く感じる」というほど単純ではなくて、研究によって結果が違ったり、色の明るさや実験環境によっても変わってきます。覚えておきたいのは、色によって人の感じ方や認知のあり方が変わる可能性があるということ自体で、法則として暗記することじゃないんですよね。
色は「人」だけでなく「環境」にも働いている
色というと、赤は情熱的、青は冷静、黄色は明るい、というふうに人の性格と結びつけて考えたくなります。でも実際に色が使われている場面を見てみると、工場では注意を向けるために、街では空間の印象や安全性のために、店舗では商品の見え方や雰囲気のために、色は使われている。人の性格を判断するためというより、人と環境の関係をつくるために使われている場面の方が、実はずっと多いんです。
私自身、パーソナリティーカラー理論で色を人理解の材料として使っていますが、その前提には、色がこうやって環境の中でも独立した働きを持っているという前提があります。人を読むための色の話をする前に、まず色自体がどういうものかを知っておくと、色の性質と人の状態を重ねて考えるときの解像度が上がる気がしています。
※この文章について
ここで紹介した色彩と行動・認知の関係は、研究で示されている傾向や環境色彩の考え方をもとにしていますが、「この色なら必ずこの心理状態になる」という単純な法則ではありません。色の感じ方や作用には、色相だけでなく明度・彩度・文脈・文化・個人の経験など、さまざまな要因が関係します。
また、私が実践しているパーソナリティーカラー理論は、こうした色彩に関する知見を参考にしながら、人の状態や特徴を理解するための仮説モデルとして構成した独自の実践理論です。
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